DT50 メンテナンス情報 

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   DT50 Maintenance Information DT50 
 
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クラッチディスク交換
走行距離が3万キロを越え、滑りはありませんがクラッチのつながりにパンチがなくなり、しばらく乗らないとクラッチが張り付くようになったのでクラッチ関連部品の交換を実施しました。
クラッチハウジング全景 クランクケースカバーを外す前に、ギアオイル・冷却水を抜きます。

冷却水はウォーターポンプハウジングのホースを外して抜きました。

ドレインボルトから抜くこともできます。(拡大図参照)
ギアオイルの抜き取りは処分の容易なポイパックをAmazonで調達しました。
内袋の中に吸収材が入っており、そのまま袋ごと燃えるごみに出すことができ、バイクなどの小容量オイルの廃棄に便利です。
冷却水抜き取りとタコメーターケーブル外し タコメーターケーブルはハウジング内のボルト2本を外して抜きます。
オイルバンプケーブル取り外し オイルポンプケーブルを取り外します。(拡大図参照)

キックペダルも外しますが、スプラインが固着して抜けない場合はCRCスプレーを吹きかけてしばらく放置が良いでしょう。
ハウジングボルト外し ハウジングのボルト6本を外しますが、リアブレーキレバーに隠れた位置に1本ありますので、リアブレーキアジャスターを緩めて遊びを作らないと外せません。(拡大図参照)

※ボルトは+ネジですが、固着して固いのを無理に緩めようとすると頭をなめてしまうのでショックドライバーか貫通ドライバーで叩いて緩めます。
オイルポンプホース抜き取り オイルポンプホース2本を抜きます。※黄色丸印
オイルタンクから入ってくる側のホースはオイルポンプ側から、吐出側はキャブレターから抜き取りました。(拡大図参照)
オイルタンクからのインレットホースはオイルが漏れてこないように何かで栓をしておきますが、今回はホースが硬化していましたので、交換を前提にバイスで挟んで止めました。

オイルタンクは簡単に取り外せますので、タンク内のオイルを抜いた方が手っ取り早いかもしれません。
ハウジングからシリンダ間の冷却水パイプの固定ボルト2本も忘れずに取り外します。(拡大図参照)  
 
 クラッチ本体 ハウジングはプラスチックハンマーで叩きながら外しますが、このときキックペダルシャフトがクランクケースに残るように、同時にシャフトの頭も叩きながら取り外します。
 クラッチ本体2 プレッシャープレートには矢印の刻印がありますが、念のためドリブンギアに合わせマークをマジックペンで印付けしました。
クラッチハウジングを外すときにキックペダルの軸も一緒に抜けた場合、組付け時にとても苦労します。必ず車体側にキックペダルシャフトが残るように注意してください。  
 
クラッチ本体3  センターボルトのナットからの突き出し量をノギスで測っておきました。
(2.5ミリ)

センターボルトナットとクラッチプレート固定ボルト4本を外します。
クラッチプレートとフリクションプレートの外し  クラッチプレート(金属製)とフリクションプレート(ライニング付き)一式を外します。
合計5枚となります。

フリクションプレートは新品比で0.3mmの摩耗でしたが、黒く焼けています。
外した部品  外した部品。
クラッチ部品構成図
赤印が交換したクラッチ部品。
構成部品は前期型(3LM1,3LM2型)は1点のみ部品構成に違いがあり
下図↓を参照してください。
 
部品構成図2 3LM1,3LM2型のみ11番表記のクッションリングが入ります。

このクッションリングは張り付き防止の目的ですが、デメリットとしてクラッチが滑り易くなったり、劣化して千切れるなどの理由で後に廃止されたと推測します。
使用部品番号一覧

4EU-16321-00 プレート,フリクシヨン x3
257-16324-00 プレート,クラツチ x2
90501-20125 スプリング,コンプレツシヨン x4
5R2-15461-04 ガスケツト,クランクケースカバー
5R23-12434-01 ウォーターパイプガスケット
ヤマハ純正ギアオイル 0.7L (規定量)
ロングライフクーラント

131-16367-00 リング,クッション x3 ※3LM1,3LM2型のみ
新品部品組付け時には、フリクションプレートとクラッチプレートには必ずギアオイルを塗布してください
 クラッチ組付け プレッシャープレートボルトは対角線で3回くらいに分けて均等に締め付けます。
締め付けトルクは3.0N-mですが3.0、トルクレンチがないので感で締め付けました。この部分は緩みにくいようで、あまりシビアに考えなくても良いようです。
 クラッチ調整  最後にクラッチのセンターナットを取り付けますが、クラッチレバー側でワイヤーアジャスターのネジ部が中間に位置した部分でちょうどいい遊びになるように取り付けました。
このときのセンターボルト突き出し量は2.0mmでした。
およそ2~2.5mmの間に収まります。
センターボルトでクラッチのクリアランス調整することができ、時計方向廻しで隙間狭い、左廻しで隙間拡大となりますが、隙間が少なすぎるとクラッチの切れが悪くなります。
なお、この調整はクランクケースカバーを組付けたあとでは調整ができないため、必ず組付け前に行ってください
 
 
クランクケースガスケット クランクケースカバーガスケットに両面とも位置ずれ防止のためグリス塗ってからカバーを組付けます。
 組付け完了後キックペダル位置 組付けは逆の手順となりますが、オイルホース2本は硬化していることが多く、同時交換をお勧めします。
(後述のオイルポンプ分解・シール交換 オイルホース交換を参照ください)
キックペダルは収納時にホースに干渉しないよう上図位置にて取り付けします。  
  最後にオートルーブをタンクに満たし、ブリーザーボルトを外してオイルが流れ出るまで待ち、エア抜きをします。
ウォーターポポンプシールの交換
ウォーターポンプオイルシール交換
ウォーターポンプのオイルシールを一度も交換していない個体ですと、シールが硬化して、冷却水がギアオイルに混入する原因となりますので、クラッチ交換作業の一環としてシールの交換を実施しました。
ウォーターポンプギア部 ギアのスナップリングを外し分解します。

ギアは上下の向きがありますのでマークをつけておきました。
ウォーターポンプ部品 分解したウォーターポンプ。
ウォーターポンプオイルシール
組付け時、裏表に注意
  シールの取り外しはカバー裏側の穴からドライバー突っ込んで外すとのことですが、シールが固くてここからでははずせませんでした。
シールの中央に大きなマイナスドライバーを差し込んでこじり取りました。

シール外周とカバーの間にドライバーを差し込んで外すのはNGで、水漏れの原因となります
 オイルシール取り外し後 ウォーターポンプオイルシールを取り外した後のカバー。
 ウォーターポンプシール挿入 22ミリのソケットレンチでシールを挿入します。
正しくははプレスで圧入するようですが、ハンマーで叩いて入れました。
シールの外周にシリコングリスを塗布すると入りやすいです。

挿入後にリップ部にグリスを塗っておきます。
 ウォーターポンプオイルシール挿入後 ウォーターポンプオイルシール取り付け後。
ウォーターポンプインペラ ウォーターポンインペラの軸に傷や段付きがないことを確認します。
羽根の部分に欠けがないことも確認してください。
羽根はプラスチック製です。

異常はありませんでした。
使用部品番号一覧

93103-10168 ウォーターポンプオイルシール
5R2-12428-01 ウォーターポンプハウジングガスケット
5R2-12434-01 ウォーターパイプOリング

 
 
 
キックペダルシャフトガスケット交換
キックペダルのシャフトシールから少しオイルが漏れていましたので交換しました。
キックペダルオイルシール交換  シールはドライバーでこじると簡単に外れました。
新品のシールを手で押し込んで完了です。
使用交換部品番号

93109-15001 キックペダルオイルシール
オイルポンプ分解・シール交換 オイルホース交換
クラッチ交換時オイルポンプハウジング内にオイル漏れの形跡があったので、ついでにオイルポンプを分解し
シールを交換しました。
なお純正パーツリストにはシールの部品番号等の記載がありませんが、部品はヤマハ他車種の流用で入手可能です。(部品番号は後述)
ただし、オイルポンプは原則非分解となっていますので、自己責任で行ってください。
オイルポンプ本体 ワイヤーがかかるドラムの部分は分解することなく4本のビスを外すと、ポンプ本体が二分割できます。

分解したら、順番にパーツを並べパーツクリーナーで清掃します。
 オイルポンプオイルシール 交換するオイルシールは2か所で大小1個づつになります。
シールは簡単に外せますが、小さいほうのシールを挿入する際、適合するソケットレンチを使って奥までしっかり挿入します。
大きい方は手で挿入可能です。
挿入後、シールリップ部にシリコングリスを塗布しておきます。
シールには向きがありますので、取り外し前にスマホなどで画像を撮られることをお勧めします。
黒い樹脂製のギアは向きがありますのでマーキングしておくことをお勧めします。
ちなみにギア切り欠き縦ての部分が右となります。
 
 
オイルポンプボデーガスケット オイルポンプボデーガスケットは必ず交換します。
オイルホースアウトレット側 オイルポンプ→キャブレター間のオイルホースを取り付けます。
ホースに潤滑スプレーを吹きかけノズルに差し込んだ後に金属性のクリップを爪でゆっくり挿入します。
ドライバーを使うとホースを傷つける可能性があります。
  オイルポンプガスケットを交換の後にクランクハウジングカバーにオイルポンプを取り付けます。
オイルポンプホース オイルポンプホースの交換はオイルタンクを脱着したほうがやり易いです。
オイルタンク→オイルポンプ間のホースは部品が欠品ですので、汎用の耐ガソリンホース(内径6mm 外形9mm)をAmazonで用意しました。
ピンク色の1メートルの品です。
付属のホースクリップは頼りないので、耐熱ロックタイで締め付けました。
ホースに巻いてあるスプリングはそのまま使用しました。  
 
 オイルホース設置 オイルホースの引き回しを行い、クランプで元どおりに固定゜します。
オイルポンプ調整  オイルポンプの調整を行います。(拡大図参照)
スロットルが開き始めるところでガイドピン(黄矢印)とドラム合いマーク(赤矢印)の位置が合っているか確認し、ずれている場合はオイルポンプワイヤーのエンジン側ダブルナットを緩めて調整します。

少しズレていましたが、外す前の位置と変わらなかったのでそのままにしておきました。
使用部品番号

93104-14059 オイルポンプシール (大)
93104-04114 オイルポンプシール (小)
86A-13142-00 オイルポンプガスケット (ボデー中間)
126-13116-01オイルポンプガスケット
90445-05N13 オイルデリバリホース
90468-02033 ホースクリップ X2
汎用耐ガソリンホース(耐油ホース)内径6ミリ外径9ミリおよびロックタイ
 
まとめ

クラッチ各部品の交換により、パンチ力のあるクラッチミートがよみがえりました。
せっかくクランクカバーを外すので、ついでにウォーターポンプのオイルシールやオイルポンプのホースなどの同時交換をお勧めします。
2023年時点においても、ヤマハに純正部品の在庫がしっかりあることは驚異的です。
ただし、部品価格が往時より大幅に値上がりしており、輸入自動車の部品並みになっています。
ヤマハの純正ギアオイル、オートルーブ (2stオイル)などはかつての倍近い値上がりです。
車体も中古相場が高騰しており、完全に趣味車の領域になってしまいました。
掲載の2023年10月時点で、クラッチ関連パーツ一式の価格はおよそ1万5千円 (油脂類除く)でした。
希少な2Stエンジン車として大切に乗ってゆきたいものです。
       
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